DXの目的を「業務効率化」だと思っていませんか?
DXの目的を「業務効率化」だと思っていませんか?
「DXに取り組みましょう」
そう言うと、だいたい返ってくる答えがあります。
「紙をなくしましょう」
「入力作業を自動化しましょう」
「残業時間を減らしましょう」
「クラウドツールを導入しましょう」
もちろん、どれも間違いではありません。
作業時間が短くなり、社員の負担が減る。それは、とても良いことです。
でも、DXの目的は本当に「業務効率化」だけなのでしょうか?
もしそうなら、作業が10分短くなった時点でDXは成功です。
紙をPDFに変えればDX。
Excelをクラウドへ移せばDX。
新しいシステムを入れればDX。
そんな話になってしまいます。
いやいや、ちょっと待ってください。
それはDXではなく、作業のデジタル化です。
効率化だけを目指すと、必ずこうなる
業務効率化を目的にシステムを導入すると、現場ではこういう話が始まります。
「前のやり方のほうが早かった」
「入力項目が増えて面倒になった」
「この機能は誰が使うの?」
「結局、Excelにも入力しています」
そして最後には、
「うちの社員はITが苦手だから、DXは無理だ」
となる。
違います。
社員が悪いのではありません。
DXの目的を決めずに、道具だけ入れたことが問題なのです。
目的地を決めずに高級車を買って、「全然たどり着かない」と怒っているようなものです。
そりゃ、たどり着きません。
どこへ行くかを決めていないのですから。
DXの本当の価値は「データが取れること」
私は、DXの本質は業務効率化ではないと思っています。
もちろん、効率化も大切です。
しかし、それ以上に重要なのが、経営や業務に必要なデータを取得できる状態をつくることです。
誰が、いつ、何をしたのか。
どの商品が、どの顧客に売れているのか。
問い合わせから契約まで、どれくらい時間がかかっているのか。
どこで仕事が止まっているのか。
どの作業に時間を取られているのか。
顧客はなぜ離れていったのか。
紙、口頭、個人の記憶、担当者だけが持っているExcel。
この中に情報が閉じ込められている限り、会社は正しく分析できません。
分析できなければ、改善もできません。
つまり、データが取れない会社は、目隠しをしたまま経営しているのと同じです。
データがないのに、何を改善するのか?
多くの会社が「業務を改善したい」と言います。
では、どの業務に、何時間かかっていますか?
どこでミスが発生していますか?
誰に仕事が集中していますか?
その作業は、月に何回ありますか?
こう聞くと、急に答えが曖昧になります。
「たぶん、このあたりです」
「担当者が忙しそうです」
「昔から、この方法です」
それは分析ではありません。
雰囲気です。
雰囲気で問題を決め、雰囲気でシステムを導入し、雰囲気で「効率化できた気がする」と評価する。
これでは、DXではなく“DXごっこ”です。
改善するためには、まず現状を知らなければいけません。
現状を知るためには、データが必要です。
そして、正しいデータを継続して取得するために、DXが必要なのです。
「入力させるシステム」では意味がない
ただし、データを取るためだからといって、社員に入力作業を押しつけてはいけません。
入力項目を増やし、報告書を増やし、管理画面を増やす。
これでは、データを集めるために仕事が増えてしまいます。
社員が入力しなくなり、データが抜け、最後には誰も信用しないシステムになります。
データは、できる限り日常業務の中で自然に蓄積されるべきです。
見積書を作ったら、見積金額と作成日が残る。
問い合わせへ返信したら、対応時間が残る。
案件が進んだら、進捗と担当者が記録される。
請求したら、売上データへつながる。
社員が仕事をするだけで、分析に必要なデータが集まっていく。
これが、目指すべきDXです。
効率化は「目的」ではなく「結果」
DXの目的を業務効率化にすると、「何分短くなったか」だけで判断してしまいます。
しかし、データを取得し、分析できる会社になれば、見えるものが変わります。
売れている理由がわかる。
失注している原因がわかる。
利益を生んでいない作業がわかる。
社員が困っている場所がわかる。
次に何を改善すべきかがわかる。
その結果として、ムダな作業が減り、判断が速くなり、業務も効率化されます。
順番が逆なのです。
効率化するためにデジタル化するのではない。
正しく分析し、正しく判断するためにデータを取る。
その結果として、業務が効率化される。
そのDXで、何のデータが取れますか?
新しいシステムを導入するとき、最初に聞くべき質問は、
「何が便利になりますか?」
ではありません。
「このシステムから、どんなデータが取れますか?」
です。
そして、そのデータを使って、
「何を分析し、どんな判断をしたいのか?」
ここまで決めて、初めてDXが始まります。
紙をなくした。
クラウドに移した。
新しいツールを導入した。
そこで満足してはいけません。
データを取れないDXは、ただの高価なデジタル文房具です。
DXの本質は、会社の動きをデータとして見えるようにすること。
見えるから、分析できる。
分析できるから、判断できる。
判断できるから、改善できる。
DXは、仕事を少し楽にするためだけのものではありません。
会社が勘と経験だけに頼らず、正しい判断をするための土台なのです。
――DXおじさんの戯言